【イベントレポート】濱中淳子×伊藤賀一 『大学でどう学ぶか』『もっと学びたい!と大人になって思ったら』W刊行記念トークイベントを開催
2025年06月25日/ 管理人

2025年6月1日、東京・世田谷区にて、早稲田大学教育・総合科学学術院教授の濱中淳子先生と、濱中先生の元教え子であり、スタディサプリ社会科現役講師の伊藤賀一先生によるトークイベントが開催されました。本イベントは、濱中先生の著書『大学でどう学ぶか』と伊藤先生の著書『もっと学びたい!と大人になって思ったら』(いずれも、ちくまプリマー新書/筑摩書房)の刊行を記念して企画されたものです。
濱中先生は大学での豊かな学びの「手がかり」を示し、伊藤先生は自身の経験から語る生涯学習の「楽しさ」を語り、未来の大学生から、学び直しに一歩踏み出したい社会人まで、すべての「学びたい人」の背中を押すメッセージを送りました。
本イベントの模様を3本立てでレポートします。今回の第一弾では、トークイベント全体のイベントレポートをお届けします。トークイベントの概要・全体の流れ、登壇者の紹介、トークセッションの要点まとめなど、イベントの全体像が分かる内容となっていますので、ぜひご覧ください。
イベント概要
- 開催日時:2025年6月1日(日) 19:00-21:00
- 主催・会場:本屋B&B(世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 2F)
- 登壇者:濱中淳子先生、伊藤賀一先生
- 参加者数:対面・オンラインあわせて40名[1] [2] [3]
大学生から社会人まで、「学びたい」人が一堂に会しました
2025年6月1日(日)19時、イベントは定刻通りにスタート。会場にもオンラインにも、多様な参加者・視聴者が集いました。
早稲田大学では教授・学生の関係性でもあったお二人は、今やすっかり仲良し。お二人ならではの和やかなやりとりのおかげで、トークセッションは終始リラックスした雰囲気で進行しました。
「学び」にまつわる様々な対談のトピック
今回のトークセッションの対談トピックはこちら。
- 18歳での大学受験時の話
- 大学生時代に目指していたものや迷っていたこと
- 濱中先生・伊藤先生それぞれの「アウェイ経験」
- 実際に「活用した教員」について
- 著者として特に読んでほしいのはココ!
- 会場の参加者からの質問コーナー
お二人それぞれの実体験を交えながら、唯一無二の視点で教育を語りました。「アウェイ経験」と「教員の活用」は、濱中先生が説く、大学での豊かな学びに欠かせない2つの鍵。濱中先生・伊藤先生それぞれの「アウェイ経験」については、第二弾レポート、「活用した教員」については、第三弾で深掘りします。
登壇者の自己紹介
濱中先生、伊藤先生お二人の出会いは2019年。その頃、伊藤先生は47歳で早稲田大教育学部4年生でした。そしてその年、濱中先生は東京大学から早稲田大学に移籍し、早稲田大学教育学部で教鞭を取ることになりました。その頃伊藤先生は、濱中先生の著書を何冊も読むほど、濱中先生の「ファン」だったとのこと。濱中先生の授業を受けた時には、本にサインまでもらってしまったそうです。
最初は、教授と学生という関係で出会ったお二人も、そこから交流が続き、今ではすっかり仲良くなり、共に登壇する間柄となりました。
18歳での大学受験時の話
最初のテーマは「18歳での大学受験」。二人の話からは、異なる環境ながらも、合格の鍵となる共通点が見えてきました。
濱中先生が語ったのは、学校メインで東大に合格した富山での高校時代。放課後は化学実験室に同級生たちが集まり、得意教科を教え合う。職員室前のベンチで先生からの添削指導を受ける等々。「騙されたと思って学校に来て勉強してごらん、そしたら受かるから。」という担任の先生の言葉を信じて、高校3年1月になってからも毎日学校に通い、大学受験に向けた準備をしていたそうです。
一方、伊藤先生は関西圏の進学校出身。高2から河合塾や駿台に通うのが当たり前の「予備校文化」の中にいたそうです。しかし、予備校が全てだったわけではなく、濱中先生の話にも通じる「勉強していても馬鹿にされない環境」「生徒同士で高め合う雰囲気」「熱心な先生の指導」といった、進学校ならではの学校の支えも大きかったと語りました。
学習スタイルは違えど、本質的な環境は同じだったのかもしれません。
大学生時代に目指していたものや迷っていたこと
テーマは「大学生時代に目指していたものや迷っていたこと」へ。ここでまず語られたのは、現在の濱中先生の姿からは想像もつかない、意外な大学生活でした。
「私の大学生活は、お世辞にも真面目とは言えないものでしたよ(笑)」と、濱中先生は当時を振り返ります。「下北沢のマクドナルドでアルバイトをしていた」「当時流行していた安室奈美恵さんのファッションに憧れていた」「カラオケによく通っていた」など、東大生という肩書からはあまり想像できない学生時代の思い出を語ってくれました。
また、濱中先生は理科2類で東大に入学していますが、元々「文転狙いの入学」だったとのこと。東大に入ってからも、数学の単位を落とすなど、「やはり理系は得意じゃない」と痛感。2年次夏の進学選択では「とにかく文系に行きたい」という想いは強かったものの、どこに行けばいいのかは全くわからなかったと言います。そんな漠然とした思いの中、最後は「本郷キャンパスに通ってみたい」という気持ちと、キャリアセンターの提案を頼りに「教育学部比較教育社会学コース」へ。偶然の選択が、その後の人生を決定づけたのです。
濱中先生の偶然に満ちた進路選択とは対照的に、伊藤先生は非常に「戦略的」。「僕は、何かを決めてから行動する羅針盤型の人間なんです」。その言葉通りの、明確な目的・緻密な計画に基づく、当時の進路選択について話してくれました。
伊藤先生が最終的に目指していたのは「物書き」になることでした。その夢を叶えるための戦略として、まず「予備校の日本史講師」として有名になることを目指したそうです。東京でトップの講師(≒日本一の予備校講師)になれば参考書の執筆依頼が来て、ゆくゆくは同じ出版社から一般書を出すチャンスも生まれる、と考えたのです。そして、トップ講師として説得力を持つには「史学科卒」という肩書きが不可欠。
そこで、伊藤先生がベストだと考えた選択は、「東京の大学の史学科」に進学することでした。結果、唯一合格を手にした法政大学文学部に進学することになったそうです。
濱中先生・伊藤先生それぞれの「アウェイ経験」
話題は次に、本イベントの核心的なテーマの一つである「アウェイ経験」へと移ります。「アウェイの世界に飛び込む」こと。それは濱中先生の著書『大学でどう学ぶか』が説く、豊かな学びへの重要な第一歩です。お二人はそれぞれ、どのような「アウェイ」を経験したのでしょうか。詳細は第二弾で紹介します!
実際に「活用した教員」について
そして次の話題が、「教員を活用すること」。これも、濱中先生の著書『大学でどう学ぶか』が説く、もう一つの豊かな学びへの鍵なのです。大学時代にお世話になった先生との思い出を交えながら、お二人はそれぞれ、「教員の活用」について語ります。詳細は第三弾でご紹介します。お楽しみに!
著者として特に読んでほしいのはココ!
最後に、お二人は「著者として特に読んでほしいところ」について語りました。
伊藤先生:「自分が学生だった時に、こんなふうに思っていたな、先生にこんな風に声かけてもらえたら嬉しかったな、とか、そういう何気ない自分のエピソードを交えながら書いています。この本を読んで、読者の皆さんも、ご自身の経験を振り返ってくれたら嬉しいです。そして、この本を読むことで、大学にもう一回行ってみよう、とか、資格勉強してみよう、とか教育のモチベーションを上げてもらえたらな、と思ってます。学び始めるきっかけになったらと思ってます。」
濱中先生:「『アウェイの経験』や『教員を活用すること』は、本書でぜひ伝えたかった大事なポイントです。でも、どんなことが成長のきっかけになるかは、人それぞれ。だからこそ、『何が大事かよくわからなくて迷っているときに、手に取ってもらえたら』という思いでこの本をつくりました。もうひとつ、最後に込めたメッセージは、「大学でどう学ぶかは決まったかたちがあるわけじゃなく、そもそも大学をどのような場にするかは、みんな次第」ということ。いまの大学の姿も、たくさんある選択肢のひとつにすぎません。これからの大学をどうしていくか、一緒に考えていけたらうれしいです。」
こうしてトークセッションは無事終了。
第二弾では、濱中先生・伊藤先生それぞれの「アウェイ経験」について詳しくレポートします。ぜひお楽しみに!
著者プロフィール

管理人 (kaerukun)