農業で学力が伸びる!
2022年01月17日/ 前田 耕司
オーストラリアのNSW州の大学入学資格試験においてトップに君臨する学校があります。シドニー郊外のジェームズルーズ農業中等学校です。農業も学びますが、シドニー大学など伝統校に進学し、医師や弁護士やエンジニアなどをめざす生徒が多い選抜制の州立校です。選抜校でありながら農業学校であることは何となく二律背反のイメージが強いのですが、実はそこにはしっかりした根拠があるのです!
例えば、畜産を通じて生命の誕生から死にいたる死生観について認識を深め、そしてリーダーになったときのために、食料の供給や水質問題、持続可能な資源利用、気候管理など日頃から生活について責任ある行動に基づく意思決定をします。こうした社会問題を解決する視点を養う教育が中学校段階から行われているのです。
中核科目である農業実習は、自然、木々、動物、植物が人の心や情緒の発達などメンタル面に良い影響を及ぼすなどの効果が認められ、それが生徒の心の安定にもつながるのです。また、農業実習に上級生や下級生がペアを組んで取り組むことで、チームワークの大切さや責任を分担し合うことの重要性を学べます。上級生と下級生は相互理解を育みながら将来に向けて(卒業後)ネットワーク形成の素地をつくるというという感じでしょうか。
日本にもこのような進学校があってもよいのではないでしょうか。
この農業学校に少しでもあやかりたいと、コロナ禍前は、ゼミ合宿で相模川自然の村で農業体験プロジェクト(写真参照)を行ってきました。今年こそ再開したいと願うのですが…。
著者プロフィール
前田 耕司 (まえだ こうじ)
教育・総合科学学術院 教育学部 教授
多文化教育,国際教育学,比較社会教育
https://w-rdb.waseda.jp/html/100000515_ja.html