「テキストマイニング入門」の面白さや活用法を武藤浩子先生 にインタビュー

2025年03月06日/ 管理人

今回は、早稲田大学非常勤講師の武藤浩子先生に、「テキストマイニング」について解説してもらいます。

早稲田大学教育学部教育学科生涯教育学専修では、生涯教育、社会教育、教育社会学の「内容」だけではなく、自分で立てた問いを解明するために集めたデータをどう分析するのかという「分析手法」(方法論)の授業も多くあります。

分析手法は大きく【量的分析】【質的分析】の2つに分かれ、前者は数字を扱う方法、後者は数字ではないデータ、主に「文字(テキスト)データ」を扱う方法です。

そして生涯教育学専修では、2024年度、【質的分析】について以下の3つの授業を新設しました。

①質的調査法Ⅰ…質的調査を用いた論文を読むことを通して、質的調査の魅力に迫る

②質的調査法Ⅱ…観察やインタビューなどを中心とした質的調査法について、そのプロセスと手法を学ぶ

③テキストマイニング入門…世の中にあふれているテキスト(SNSや口コミ、アンケート回答など自由な形式で記述された文章)の分析手法を学ぶ

 

今回は、このなかで「③テキストマイニング入門」を担当している武藤浩子先生にお話を伺いました。

「テキストマイニング入門」がどのような授業で、どう活用できるか具体的にイメージしやすい内容となっています。
「テキストマイニングの履修を考えている」「興味がある」という方は、ぜひご参考にしてください。

※他の分析手法の授業紹介も、引き続き行っていく予定です

 

武藤浩子先生

<武藤浩子(むとう・ひろこ)先生プロフィール>

早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。早稲田大学非常勤講師。大学教育学会・学会奨励賞受賞(2021年度)。著書である『企業が求める〈主体性〉とは何か:教育と労働をつなぐ〈主体性〉言説の分析』は、企業人事が選ぶ「日本の人事部 『HRアワード2024』」入賞。

 

テキストマイニングってなに?

テキストマイニング(text mining)」とは、SNSの文章や顧客アンケートなどの大量のテキストデータから、人が理解できる形で有益な情報を取り出す分析手法です。

世の中は多くのテキスト(文章)であふれています。
たとえば、企業はどのような学生を求めているのか、人びとはSNS上でどのような意見を発信しているのかなど、私たちは日々さまざまなテキストを目にしています。

そのようなテキストを単語やフレーズに分解し、出現頻度や共起関係などを詳細に分析することで、意味のある情報を読み取ることができます。

たとえば言葉と言葉のつながりを、次の図のように見える形で示すこともできます。

共起ネットワーク図

<共起ネットワーク図>

テキストマイニングを行うことで、テキストを読んでいるだけでは発見できない新しい視点を得ることができます。

 

教育学や教育社会学でも、テキストマイニングの手法は用いられていますか?

もちろんです。
たとえば、授業アンケートの自由記述を分析すれば、学生がどのような授業に満足感を覚えているのか、選択肢だけでは知ることができない「隠れた要因」についても知ることができるでしょう。

 

新しい授業「テキストマイニング入門」の概要、特徴を教えてください!

履修生は1年生から4年生までで、2025年度からは、大学院生も履修できるようになります。

1年生が無理なく学べ、大学院生にも新しい発見があるように、テキストマイニングの基礎やソフトウェアの使い方を学ぶだけでなく、レポート執筆を通して「論文を書くこと」についても学んでいきます
この授業のキモは、自分たちが「調べたい」と思うテキストを選び、自分たちでテキストデータを集めて分析し、まとめるというところだと思います。

また、テキストマイニングを学ぶだけでは、大学で用いる調査法の全体像が理解しづらいので、アンケート調査やインタビューの基本についてもあわせて学ぶようにしています。

 

武藤先生ご自身これまでどのようにテキストマイニングを活用されてきましたか?

私自身の研究の中で「企業が学生に求める人材像は、どのように変化してきたのか?」について調べるために、テキストマイニングを使いました。

この分析結果については、『企業が求める〈主体性〉とは何か』(東信堂)で読むことができます。この本は、早稲田大学の中央図書館、教育学部の学生読書室にも所蔵されているので、興味がある人はぜひざっと読んでみてください。

 

テキストマイニングの面白さ、魅力とは?

日々なにげなく目にしているテキストから、人びとの意識やその変化などを読み取ることができるのが面白いところです。

皆さんが「いま何に興味を持っているのか」によって、面白さのポイントも違ってくると思います。
テキストマイニングの授業では、「KH Coder(ケイ・エイチ・コーダー)」というソフトウェアを使う予定です。実習を通して、データ分析や、テキストマイニングの考え方を知ることも、面白いポイントだと思います。

 

「テキストマイニング」は卒論にも使えますか?

はい、卒論でも使えます。大学院に進む方であれば、修士論文や博士論文でも使うことができます。
私は、修士論文では、アンケート調査とインタビューを行い、博士論文ではテキストマイニングとインタビューを組み合わせて行いました。

 

最後に、学生へのメッセージをお願いいたします!

生涯教育学専修では、統計解析ソフトウェアSPSSを使ってデータ分析を行う「教育調査」という授業が必修になっています。
「テキストマイニング入門」もあわせて学ぶことができれば、卒業論文や修士論文だけでなく、社会にでてからも役立つ考え方、ものの見方を身に付けることができると思っています
学生からは、SPSSやKH Coderが使えることが就活でのアピールポイントになったという話を聞くこともあります。
「なんか面白そうだな」と思ったら、ぜひ履修を検討してください。

 

武藤先生、ありがとうございました!

 

著者プロフィール

管理人 (kaerukun)