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なぜ,いま
生涯教育なのか

時代の文脈を意識しながら
大学で学ぶ意義を考えることも大事です.
生涯教育の場合はどうでしょうか?

さあ,「これからの学び」を一緒に考えよう

長寿社会の進展や急速な技術革新を背景に,生涯を通じた学びの重要性が強調されるようになりました.「人生100年時代では,これまでのライフプランは通用しない」「AI時代に必要なスキルを獲得しよう」等々,みなさんも一度は聞いたことがあるフレーズではないでしょうか.

寿命がのびれば,時間の過ごし方が変わる.テクノロジーが高度化すれば,働き方が変わる.それに伴い,学びのあり方が見直されるのは,必然の流れだといえます.識者のなかには,3ステージ(【教育期:~20代】→【仕事期:~60代】→【引退期:60代~】)の時代は終わり,何歳になっても学び直し,自らをアップデートする「マルチステージ化」の時代が始まったという人もいます.家族の多様化や女性の社会進出が,こうした風潮を後押ししているとみることもできるでしょう.

学びを求める社会人の多さを示すデータもあります.文部科学省が公表した『社会人の学び直しの実態把握に関する調査研究報告書(2019年度)』(PDF p.9)(文部科学省サイト https://www.mext.go.jp より)をみると,33%の人がすでに学び直しの経験があると答え,50%の人が学び直しを実施したことはないが予定・興味があると回答しています.

ただ他方で,以上の流れを批判的に捉える声があることは,急ぎ指摘しておく必要があるでしょう.「学びを押し付けるな」――こうした声は,状況や価値観は多様であり,学びのあり方は慎重に検討されなければならないことを教えてくれます.学びが有益である場合もあれば,そうでない場合もある.個人にとっては望ましい学びであっても,社会全体にとって望ましくない結果をもたらすということもあり得る.逆もまた然り.では,こうした学びを「教育」という仕組みでどう支えるべきなのか.これはすぐれて複雑な問いなのです.

生涯教育について学ぶこと.自己実現,人々の連帯,ネットワーク,まちづくり再生,OJT,越境学習,政策等々について,歴史や諸外国の経験,あるいは調査データに手がかりを得ながらその姿を探ること.それは,学びという次元を超え,生き方,社会を描くことにもつながります.

「これからの学び」を考える.「これからの生き方」を,「これからの社会」を一緒に考える.決して平坦な道のりではありませんが,歩き続ければ,これまでみたことがない景色に出会えるはずです.