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在学生たちの声

生涯教育学専修で学んでいる学生たちに
大学生活のことを書いてもらいました.
学ぶ側からみた専修の魅力・早稲田の魅力は
様々なところにあるようです.

榑林大和(くればやし やまと)

4年:榑林大和

※2021年夏,4年生のときに寄稿

以前「子ども論」を受講した際,先生がこんなことを言いました.「『子ども』とは普遍的な存在なのだろうか」と.私は,人生で一度も抱いたことがなかったその疑問に強く引き込まれました.曰く,現代において,ある程度若い人間は,「子ども」であり保護の対象であり幼稚で可愛らしい存在として認識されます.一方,ある時代のヨーロッパでは,彼らは飲酒や性行為すら許される「(身体が小さいだけの)小さな大人」として認識されていたようです.このように当たり前や規範を常に壊し続けくれる教育社会学や家族社会学を,私は現在ゼミで勉強しています.そこでしばしば求められる現状への懐疑的態度は,私の学生生活に大きな影響を与えました.

例えば,私が大学入学を機に始めたアルゼンチンタンゴは,日本で深く学ぶことができません.そこで,本場ブエノスアイレスに渡りギター修行をすることで,くすぶった現状の打破を試みました.他にも,幼い頃から好きだったスタジオジブリの魅力を100年先に伝えるために,早稲田大学ジブリ同好会を設立しました.既存のジブリ系サークルは,ジブリファンの立場からジブリを信奉する域を出ませんでした.そこで,アカデミックな分析を軸に,科学的,すなわち客観的にその価値を見出す試みをしています.これらの行動は,現状に安住する自分や社会への懐疑の表れです.

そんなこんなで,私は生涯教育学専修で獲得した視座を起点に大変充実した学生生活を送っています.とはいえ,「充実」ということばを用いたということは既に現状に安住しているのかもしれません.自分のポジティブな感情すら懐疑するのはいささかスタミナを要しますが,それが学問に求められる態度なのです.