【イベントレポート】トークセッションを深掘り!Part2 大学での豊かな学びの鍵②「教員の活用」について語る
2025年07月09日/ 管理人
2025年6月1日、東京・世田谷区にて、早稲田大学教育・総合科学学術院教授の濱中淳子先生と、濱中先生の元教え子であり、スタディサプリ社会科現役講師の伊藤賀一先生によるトークイベントが開催されました。本イベントは、濱中先生の著書『大学でどう学ぶか』と伊藤先生の著書『もっと学びたい!と大人になって思ったら』(いずれも、ちくまプリマー新書/筑摩書房)の刊行を記念して企画されたものです。
3本立てでお届けするイベントレポートの第三弾となる本記事では、トークセッションを深掘りします。テーマは、濱中教授が著書『大学でどう学ぶか』で提唱する、もう一つの大学での豊かな学びの手がかりー「教員を活用すること」。「教員を活用する」とはどういうことなのか、どうしてそれが重要なのか。お二人の実体験から見える、「豊かな学びの鍵」について迫ります。ぜひご覧ください。
実際に「活用した教員」について
濱中先生の著書『大学でどう学ぶか』が説く、豊かな学びへの第一歩。それは「教員を活用する」ことです。これには伊藤先生も「まさにその通り!」と大共感。
伊藤先生:
僕も濱中先生の「教員を活用する」という考えにはすごく共感しています。大学に入学するということは、その大学のあらゆるリソースにアクセスできる“フリーパス”を手に入れるようなもの。それなのに、ほとんどの学生が使い倒せていなくて本当に勿体無い!どの教員のメールアドレスも知ることができて、図書館やら大学のあらゆる施設も使えて、OBOG含めてコネも全部使えるのに、全然使わない。早稲田大学なんて、年間100万円以上払って、そのフリーパスをゲットしているのに、もったいないですよね。だから、僕は「使えるものは使い倒そう」っていうマインドで、卒業後の今も早稲田大学との接点を持っておくようにしています。
では、濱中先生はどのように「教員を活用」してきたのでしょうか。一人の恩師・矢野眞和(やの まさかず)先生とのエピソードを語ってくれました。
濱中先生:
お世話になった先生はたくさんいますが、とくに矢野眞和(やの まさかず)先生には大変お世話になりました。研究の面白さや難しさ、そして具体的な進め方など、多くを先生から学んだと思っています。いま、この仕事が出来ているのも矢野先生のおかげです。出会いは、私が大学院にいた頃です。
大学院に進学してからしばらく、論文どころか、文章を書くのもへたくそで。どうしたら読んでもらえる日本語を書くことができるのか。どうしたら面白い論文が書けるのか。矢野先生から直接ご指導いただいたのは当然ですが、先生の論文を手書きで写して、ロジックの回し方を体に叩き込もむといったこともしていました。
当時の矢野先生は、私にとって少し怖い存在だったんですけど、どうやったら先生と話ができるようになれるかな、面白いことでも言えるようになったら喋ってもらえるかも、って思って川柳を習ったこともあります(笑)。今思えば、なんだそれ?という感じですが、それくらい、どうすれば先生と話せるか、どうしたら論文を読んでもらえるのかな、ってずっと考えていました。
努力が実ってというか、そもそも先生は「怖い」先生ではなく、「優しい」先生だったので、こんな私でも丁寧に指導して下さり、添削、ダメだし、一緒に分析するなど、まさに、「使い倒して」いましたね。
「どうすれば先生と話せるか」と試行錯誤した濱中先生。ただ教員の授業を受けるだけではなく、学生から主体的・積極的に教員にアプローチをする、それこそが「教員を活用」することなのではないでしょうか。そして、その第一歩は、「カジュアルに教員に話しかけてみる」そんな素朴なアクションだと言えるでしょう。
伊藤先生もまた、早稲田大学での二回目の大学生活にて経験した、「尊敬できる恩師を見つけることは大事」だと痛感した、タイプの違う二人の先生との出会いを語ってくれました。
伊藤先生:
尊敬できる先生、恩師を見つけるってめちゃくちゃ大事なことですよね。
早稲田大学では、小林敦子(こばやし あつこ)先生の社会教育学のゼミに入っていたのですが、小林先生がとても良くしてくれたんです。指導も人柄も含めて。小林先生は、フィールドワークの人なので、“とにかく足で稼げ!”と。実際にいろんなところに行って何かを報告すると、フィードバックを頂けるんです。一見ふわっとした先生なのに、そのフィードバックは学問的にめちゃめちゃキツい。でも、それが見たくて、仲良くなろうとしてました。
僕は職業柄、教授を研究者としてだけでなく、『教育者として授業が上手いか』という視点でも見てしまうんです。その観点で、僕が憧れたのは吉田文(よしだ あや)先生です。
吉田先生の教育学部生全員が受ける必修授業が、大人数の一方通行型なのに、めっちゃ上手かったんです。それに衝撃を受けちゃって。僕は吉田先生とも仲良くなりたいので本を何度か献本しているんですが、吉田先生はいつも感想をおっしゃってくれるんです。だから今も、『吉田先生に褒められたい!』という気持ちがありますね。
そんなことやってたら、読者として憧れだった濱中先生も、早稲田に移籍してきて、授業をしてくれることになって。だから、改めて強調しておきたいんですけど、大学で恩師を見つけるって本当に大事なことなんですよ。憧れの先生なり、話してみたい先生を見つけるなり。星の数ほどいる大学の教授の中に「誰か」は絶対にいるので、ぜひ見つけてほしいです。そういう先生が見つかれば、大学ももっと楽しい場所になると思います。
星の数ほどいる教員の中から「尊敬できる先生」「話してみたい先生」を見つけ、自分なりの方法でアプローチし、フィードバックを糧にし続ける──そうした主体的で積極的な姿勢こそが、大学での学びを「豊か」にし、将来の可能性を広げる原動力となるでしょう。ぜひ、皆さんも大学生活の早い段階から、「恩師探し」を始めてみませんか?
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管理人 (kaerukun)