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スタッフ

生涯教育学専修の教員が送る
学生たちへのメッセージ.
大学でどう学べばいいのか,
ヒントを見つけてください.

矢口徹也(やぐち てつや)教授

矢口徹也(やぐち てつや)教授
専門分野 社会教育(青少年教育論,女性教育論)
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0078012 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100000529_ja.html
学生たちへの
メッセージ
70年前,早稲田大学教育学部に社会教育を学ぶコースが出来た目的は,働く若者たち,男性と平等の教育を受けられなかった女性たちの教育機会をつくることでした.学ぶ機会を通じて,女性や若者が社会の主人公なっていく,という強い願いに支えられたものでした.

時代は変わりましたが,現在でも学校に通うことが困難な子どもたち,「女性にだけ課された仕事と育児の両立」に苦心する人々,また,生活するために学びたくても学べない多くの大人たちが存在しています.生涯教育は,これらの解決のために大切な役割を担うことになります.みなさん,早稲田で夢を描きながら,生涯教育を学んでください.

吉田文(よしだ あや)教授

吉田文(よしだ あや)教授
専門分野 教育社会学
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0179375 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100000955_ja.html
学生たちへの
メッセージ
日本では,教育と労働とが20歳代の前半で分断されてしまっているがゆえに,大学生活が最後の自由な時間と言われています.それを最大限活用して,多様なチャレンジをしましょう.そこで皆さんにお勧めしたいことの1つに,高校までの勉強がどちらかといえば与えられた知識の習得であったことに対して,大学は自分で新たな知を作り出す場であり,それが如何に楽しいことであるかを知って欲しいということがあります.新たな知を作り出すとは「研究」を意味しますが,それは,興味を持ったこと,疑問をもったことに対して,「なぜ?どうして?」と深堀りをすることから始まります.ゴールは設定されていません.自分でゴールを見つけていく旅ですが,既定路線を走るよりは楽しいと思いませんか?この研究をするにあたって,皆さんの周囲にいる教員を積極的に活用しましょう.誰もが研究の世界の面白さに導いてくれます.

大学時代に培われたこうした態度や活動は,大学卒業後,どのような仕事をするとしても役立ちます.仕事をするということは,答えが出ていない問題に対して,自分で考え,自分で答えを見出していくことなのです.

あと1つ,皆さんにお願いです.世界は今,20代前半までに得た知識では,その後の職業人生を生き抜くことができないとして,競って社会人の大学での再学習に力を入れ,やり直し,学び直しを推奨しています.それが社会の活力になっています.大学で研究の面白さを学んだ皆さんは,10年後,20年後に,さらなる疑問や興味が沸きあがっていることと思います.そうしたとき,大学において容易にその追究ができるような社会に変えて欲しいと,切に願います.

米村健司(よねむら けんじ)教授

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専門分野 思想史,教育学
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0112911 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100000439_ja.html
学生たちへの
メッセージ
いまの日本社会は従来の考え方や捉え方ではなく,新たな知識の獲得を通じた社会形成を必要とする時代となっています.それは日常生活のなかの出来事をどのような「考え方」から各個人が捉えるのかが問われていることでもあります.つまり,人間は自分自身が有している「ことば」から社会把握と自己理解をおこなっているからです.

いいかえれば,新たな知識の獲得を通じて,自己理解も変化すると同時に,社会像も変容します.その変容過程においても,客観的な事実に基づきながら,状況に埋没しない内面性と判断力が重要となります.知識の習得が現実を多面的に理解させ,他者の言動を客観的に理解する「始まり」ともなります.言葉の選択は人間という存在の「人格」を明確に他者に提示することにもなります.

言葉の獲得とは自らの考え方や選び方を変える根源的な行為となります.これまでの教育過程で得たことを基礎として,大学という場で獲得した知識と経験を介して自己,他者,そして社会を再考する必要があります.

松山鮎子(まつやま あゆこ)講師

松山鮎子
専門分野 社会教育学,生涯教育学,学習支援論
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0155635 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100003981_ja.html
学生たちへの
メッセージ
学部時代はどちらかというと「教育」よりも「芸術」に関心があり,文学や美学関連の授業ばかりとるような学生でした.卒業論文をきっかけに,さまざまな事情で生きづらさを抱えた子どもたちの支援の現場にかかわるようになり,そこでの経験を通じて,「教育」とはどのような営みなのか,いわゆる「学校教育」とは違う観点から考えてみたいと思うようになりました.

その後,職に就いてから,各地の公民館活動や「学び」による地域づくりの実践に携わる方々との出会いを通じて,ようやく(?)自分自身が専門で学んできた社会教育のおもしろさを実感するようになりました.そうして現在は,人がこの社会で幸せに生きること,つまり福祉的かつ心理的な課題は,「ことば」による相互承認関係の組織化,または当事者性の生成と学びという,教育的な課題を基盤にしてはじめて解決可能なものになるのではないかという問いをもって,社会教育の理論や実践を探究しています.

ところで,戦後日本の社会教育研究の開祖ともいえる教育学者の宮原誠一の研究室は,「研究室の扉が村の農道に通じている」と言われていたそうです.学生の皆さんには,たとえば宮原研の学生たちがそうであったように,大学での学びと社会的な実践とを架橋して,さまざまな人に出会い,かかわる中で,学問に興味関心をもち,さらに自分なりの研究テーマを発見し,考えを深めていってほしいと思います.私自身も,皆さんと一緒にフィールドを行き来し,多様な人たちがごちゃまぜに集う研究室をつくることが理想です.