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スタッフ

生涯教育学専修の教員が送る
学生たちへのメッセージ.
大学でどう学べばいいのか,
ヒントを見つけてください.

前田耕司(まえだ こうじ)教授

前田耕司(まえだ こうじ)教授
専門分野 多文化教育,国際教育学,比較社会教育
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0078014 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100000515_ja.html
学生たちへの
メッセージ
Mt.生涯教育学専修の登山口の案内板の付近に立ち止まって,いま一歩前に足を踏み出せないでいる学生を時々見かけます.

1年生の「生涯学習概論」という必修科目を担当しているのですが,開講時に多いのが本専修を卒業して希望の仕事に就けるのかという素朴な疑問です.これまで「生涯教育(学)」という科目を履修していないわけですから,当然といえば当然です.そこで,なるべく春学期の早い段階でキャリアシートを作成し,自己分析をふまえてキャリアビジョンを描くという機会を設けています.意識するしないに関わらず,一人ひとりが多少なりとも何らかの形で生涯学習に関わってきていることを実感してもらうためです.そして,次のステップとして,人事やコンサルタントで活躍する卒業生を招へいし,生涯教育(学)がいかにさまざまな職業の下敷きになっているか社会人としての経験知を基にレクチャーをお願いします.異なる背景をもつ人たちを社内のチームに受け入れ,そうした多様な人たちがどうすれば一緒にマネジメントにコミットできるようになるのか.インクルーシブ・リーダーの研修に取り組む組織や社会のあり方について学びます.

ところで,長期に渡るメンバーシップ型の日本の雇用制度にも変化の兆しが見え始め,欧米型のジョブ型雇用への移行の転換期にあるといわれています.これまでと大きく異なる点は,どの業務もそつなくこなすというジェネラリスト(総合職)が求められるのではなく,職務や専門性に対して人が配置されます.それでも,あらゆる仕事の主体をなすのは人(ひと)であり,その人を育てる教育(学習)という営みはいつの時代にあっても不変です.こうした激しい社会情勢の変化に対しても十分に対応可能なスキルを学べるのが,生涯教育学専修の強みといえるでしょう.

頂(いただき)はもうすぐです.

矢口徹也(やぐち てつや)教授

矢口徹也(やぐち てつや)教授
専門分野 社会教育(青少年教育論,女性教育論)
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0078012 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100000529_ja.html
学生たちへの
メッセージ
70年前,早稲田大学教育学部に社会教育を学ぶコースが出来た目的は,働く若者たち,男性と平等の教育を受けられなかった女性たちの教育機会をつくることでした.学ぶ機会を通じて,女性や若者が社会の主人公なっていく,という強い願いに支えられたものでした.

時代は変わりましたが,現在でも学校に通うことが困難な子どもたち,「女性にだけ課された仕事と育児の両立」に苦心する人々,また,生活するために学びたくても学べない多くの大人たちが存在しています.生涯教育は,これらの解決のために大切な役割を担うことになります.みなさん,早稲田で夢を描きながら,生涯教育を学んでください.

吉田文(よしだ あや)教授

吉田文(よしだ あや)教授
専門分野 教育社会学
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0179375 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100000955_ja.html
学生たちへの
メッセージ
日本では,教育と労働とが20歳代の前半で分断されてしまっているがゆえに,大学生活が最後の自由な時間と言われています.それを最大限活用して,多様なチャレンジをしましょう.そこで皆さんにお勧めしたいことの1つに,高校までの勉強がどちらかといえば与えられた知識の習得であったことに対して,大学は自分で新たな知を作り出す場であり,それが如何に楽しいことであるかを知って欲しいということがあります.新たな知を作り出すとは「研究」を意味しますが,それは,興味を持ったこと,疑問をもったことに対して,「なぜ?どうして?」と深堀りをすることから始まります.ゴールは設定されていません.自分でゴールを見つけていく旅ですが,既定路線を走るよりは楽しいと思いませんか?この研究をするにあたって,皆さんの周囲にいる教員を積極的に活用しましょう.誰もが研究の世界の面白さに導いてくれます.

大学時代に培われたこうした態度や活動は,大学卒業後,どのような仕事をするとしても役立ちます.仕事をするということは,答えが出ていない問題に対して,自分で考え,自分で答えを見出していくことなのです.

あと1つ,皆さんにお願いです.世界は今,20代前半までに得た知識では,その後の職業人生を生き抜くことができないとして,競って社会人の大学での再学習に力を入れ,やり直し,学び直しを推奨しています.それが社会の活力になっています.大学で研究の面白さを学んだ皆さんは,10年後,20年後に,さらなる疑問や興味が沸きあがっていることと思います.そうしたとき,大学において容易にその追究ができるような社会に変えて欲しいと,切に願います.

米村健司(よねむら けんじ)教授

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専門分野 思想史,教育学
研究関心・業績 ■research map https://researchmap.jp/read0112911 ■早稲田大学研究者データベース https://w-rdb.waseda.jp/html/100000439_ja.html
学生たちへの
メッセージ
いまの日本社会は従来の考え方や捉え方ではなく,新たな知識の獲得を通じた社会形成を必要とする時代となっています.それは日常生活のなかの出来事をどのような「考え方」から各個人が捉えるのかが問われていることでもあります.つまり,人間は自分自身が有している「ことば」から社会把握と自己理解をおこなっているからです.

いいかえれば,新たな知識の獲得を通じて,自己理解も変化すると同時に,社会像も変容します.その変容過程においても,客観的な事実に基づきながら,状況に埋没しない内面性と判断力が重要となります.知識の習得が現実を多面的に理解させ,他者の言動を客観的に理解する「始まり」ともなります.言葉の選択は人間という存在の「人格」を明確に他者に提示することにもなります.

言葉の獲得とは自らの考え方や選び方を変える根源的な行為となります.これまでの教育過程で得たことを基礎として,大学という場で獲得した知識と経験を介して自己,他者,そして社会を再考する必要があります.