パロディ桃太郎~社会教育課題研究Ⅰ-2の紹介
2021年12月15日/ 濱中淳子
私が担当している専修の専門選択科目「社会教育課題研究Ⅰ-2」は,少し変わった(?)趣向の授業だといえるかもしれません.扱っている内容は「学校卒業後の学び・成長」で,そこにあまり新規性はないのですが,文学部でもないのに「ひたすら短編小説を書いてもらう」という課題を出しているからです.
ただ,小説を書いてもらうのは,あくまで「企業人の成長」の理解を深めてもらうためにほかなりません.テキストとしてとりあげた金井壽宏『仕事で「一皮むける」~関経連「一皮むけた経験」に学ぶ』(光文社新書,2002)を読み進め,各章で描かれている「企業人の成長ポイント」を踏まえた小説を書く….これが,この授業で履修生に課していることです.
さて,今年度(2021年度)の履修生は8人.2つの班に分かれ,隔週で小説を出してもらうことにしました.「初めての管理職」や「海外勤務」,「降格・左遷を含む困難な環境」でたくましく成長していく主人公のストーリー等々.回を重ねるごとに,提出される小説の質も高まっていきました.
そしてこの取り組みの「締め」として取り組んでもらったのが,テキストに書かれている成長を3つ以上含めた「桃太郎」のパロディを書くこと.桃太郎の成長でもいいし,鬼の成長でもいい.サル・キジ・イヌの成長を描いてもいい.成長の機会を活かしきれず,悔しい思いをする話でもいい.とにかく桃太郎の素材を使って,テキストで学んだことを盛り込んだパロディを制作するという課題にチャレンジしてもらいました.
提出された8本のパロディ桃太郎は,どれも力作!!甲乙つけがたかったのですが,授業にペアワークの要素を盛り込みたいということもあり,パロディが提出された次の回は,以下のように授業を展開しました.
- 4つのペアに分かれ,2人で力を合わせて,どちらかのパロディをブラッシュアップ
- 各ペア,作品を提出
- 全員,各ペアが提出した作品に目を通す
- 各ペア,パロディのウリをプレゼンテーション
- 各自,もっとも良かったと思うものに投票し,ベスト・オブ・パロディ桃太郎を発表
そもそも提出された8本のパロディのレベルが高かったため,各ペアが出してきた作品はどれも素晴らしかったのですが.見事,「ベスト・オブ・パロディ桃太郎」に選ばれたのは【教育学部・染谷康介さん×文化構想学部・土屋小都さん】ペアによる作品でした.その内容を少し紹介すると,舞台は,私たちが知っている桃太郎の「その後」.桃太郎の快進撃から10年,鬼が島の見回りを担当するようになったキジが,なぜ,鬼たちが「悪さ」をしていたのかを知り,「偽物の平和」から「真の平和」を作り上げるための一大プロジェクトを起こすという….まさに短編小説課題の集大成ともいえる作品であり,担当教員である私自身,おおいに楽しみました.
「学びはアウトプットから始まる」「インプットの効率を高めるためにはアウトプットすることだ」とも言われます.小説を書くというのも,アウトプットの1つ.こうした方法に関心のある方は,ぜひ,社会教育課題研究Ⅰ-2の履修を考えてみてください.
※以上は,「社会教育課題研究Ⅰ-2」全15回の前半で取り組んでいる内容になります.
著者プロフィール
濱中淳子 (はまなか じゅんこ)
教育・総合科学学術院 大学院教育学研究科 教授
専門分野:教育社会学,高等教育論
https://w-rdb.waseda.jp/html/100001497_ja.html