第4回東京国際合唱コンクールに出場して

2022年10月10日/ 戸谷登貴子

7月下旬、私が指導する佐倉ジュニア合唱団と第4回東京国際合唱コンクールに出場してきました。

このコンクールは、その名の通り東京(晴海)を会場とし、審査員も海外から招き、全11部門を3日間に渡って開催する他に類を見ない大規模な国際大会です。コロナ禍で一昨年は中止、昨年はオンライン審査、ようやく今年は海外から審査員、合唱団も来日でき、久しぶりに国際色豊かな華やかさが戻ってきました。

第4回東京国際合唱コンクール

各部門の課題曲は、毎年日本の作曲家へ委嘱され、コンクール当日が出場団体によっての初演となります。早稲田大学文学部の森山至貴先生も、今年、室内合唱部門の課題曲を作曲されました。早稲田のみなさんの中には知らない方もいらっしゃると思うので、あえてここで書き添えますと、森山先生は社会学がご専門ですが、ピアニスト・作曲家という音楽家のお顔もお持ちで、今、国内で大人気の合唱作曲家のお一人です。

このコンクールが日本の他のコンクールと違う点は、開催規模だけでなく、そのコンセプトにあります。日本の多くの音楽コンクールは、新増沢方式採点法等、審査員の順位付により結果が決まりますが、このコンクールの採点は世界各国から集まった審査員(全員が世界で活躍する合唱指揮者)による絶対評価によるものです。その得点は音楽技術と芸術性の総合点で評価されます。それはこのコンクールが、「競い合いから認め合いへ」をコンセプトにしているところに大きな理由があります。互いの合唱と文化を認め合うことがいかに大切か、当たり前ででも実は日常で忘れそうになっていることをこのコンクールは歌う者に教えてくれます。当日の会場は、出場合唱団の迫真の演奏、崇高な緊張感が漂いつつも、温かい雰囲気に包まれています。特に、海外合唱団のおおらかさや全身から溢れ出る音楽には驚かされ、競うこととは別次元にいるように感じます。

第4回東京国際合唱コンクール

佐倉ジュニア合唱団は今年3回目の児童合唱部門(18歳以下)出場で、ありがたいことに優勝することができました。ずっとコロナの影響で思うように練習ができず仕上がりも心配でしたが、さらに6,7月は感染者が増え、何より「当日、全員が元気にステージで歌えますように。」と祈る毎日でした。ですからステージで演奏できた瞬間は、これまでにないほどの喜びでした。きっと他の合唱団も同じで、苦労を乗り越えてのステージだったことが、演奏から伝わってきました。

コンクールは勝負に一喜一憂し、ややもすると大事な事を見失いがちです。特に子ども達にとってのコンクール体験は、辛い思いも喜びも強烈に心に刻まれます。指導者が一歩間違えば、疲弊する場合もあります。しかし、この東京国際合唱コンクールは、合唱で大事なことに気づかせてくれます。歌った直後に、また出場したいと子ども達が口々に言う、他に類を見ないコンクールです。

第4回東京国際合唱コンクール

 

著者プロフィール

戸谷登貴子 (とや ときこ)

教育・総合科学学術院 教育学部 講師
専門分野:音楽教育(学校音楽・合唱教育)
https://w-rdb.waseda.jp/html/100002973_ja.html