こどもの居場所
2022年01月18日/ 戸谷登貴子
毎週末、私が指導している児童合唱団の紹介をします。この合唱団は、千葉県佐倉市を拠点に活動している合唱団で、現在小学1年生から大学生までが在籍しています。元は、佐倉市教育委員会が立ち上げた小学生対象の合唱教室で、その講師として私へ依頼を頂き現在に至ります。活動は、地元での演奏会や市のイベントへの出演、またコンクール出場や海外の合唱団との合唱交流なども積極的に行っています。
しかし、創団当時は学校外の子どもの活動を、何を目標とし、活動意義とするのか、魅力に感じてもらうにはどのような活動をすべきか、試行錯誤の繰り返しでした。合唱団に独立した時点で、市からの支援もなくなり、運営面は特に大変でした。
それまで学校勤めしかしたことがなかった私にとっては、自分の視野の狭さや技術のなさと向き合うことになりました。そして、いかに学校が守られた場所、保障された場所であるかをも感じる機会となりました。学校教育と社会教育、両方で子どもを育てていくという視点が持てたのは、合唱団のおかげです。
子どもがよりよく育っていくこと、合唱を通して得られるものは何か、学校では体験できないものは何か、そこを考えて目標を持ち、活動を設定していくことで次第に合唱団の基盤ができ、活動が進んでいくようになりました。
今、合唱団の子ども達は、異年齢集団で一緒に活動することで、自分の役割を理解したり、年上の子にモデルを見たり、多くのことを学び合い共に育っています。また演奏活動によって、グローバルな視点や将来への夢が広がるなど、歌うことを通して豊かな体験をしています。
学校外にこどもの居場所があることは、その子が違う自分を発見できる場所を持っている、また社会的に広い視野を持てることにもつながっています。学校のように3年間で終わらないことも、子どもがゆっくり伸びていける場所になっているようです。生涯教育だからこそ、教育の物差しは多様にあると感じます。
著者プロフィール
戸谷登貴子 (とや ときこ)
教育・総合科学学術院 教育学部 講師
専門分野:音楽教育(学校音楽・合唱教育)
https://w-rdb.waseda.jp/html/100002973_ja.html