第29期矢口ゼミ・坂藤さんの卒論体験記(後輩へのメッセージ)です!

2023年02月09日/ 管理人

卒論体験記

卒論体験記第五弾は、第29期矢口ゼミの坂藤仁美さんです。ぜひご覧ください!

坂藤仁美

卒論テーマ:馬術競技における男女性差 —「男女共同参画」の視点から―

〈体験談・後輩の皆さんへ〉

ゼミの全体テーマは、男女共同参画社会と生涯学習だった。そこで、卒業論文は、自分が部活動として取り組んできた馬術競技を、男女共同参画の視点から考えることにした。というのは、馬術は、オリンピックの中で唯一、全種目男女混合で行う競技だからである。競技の勝敗に、男女の性差はどのように影響するのか、また、男女に平等に競技が成立するとはどういうことなのか、が問題意識だった。

卒業論文の構成は、第一章では、馬術競技の特徴、歴史について文献をもとに整理した。第二章では、スポーツの歴史に女性がどのように登場してきたのか、また、スポーツにおいて男女の機会均等、平等がどのように考えられてきたのか、さらに、馬術競技が男女混合で行われてきた理由、そこでの男女機会均等についての見解をまとめた。その上で、第三章では、現在、行われている馬術の混合競技の実際、男女性差の理解について、現役で活躍している国内外のライダーへの聞き取り調査を行った。

馬術競技には、馬場馬術、障害馬術、総合馬術と三つの種目があり、それぞれの競技によって特性、課題が異なり、調査においても三つの種目の解答は一様ではなかった。馬術と一括りには見えてこない現状もあり、実際にプロとして活躍しているライダーに話を聞くことで、現実の問題を理解するように心がけた。

ライダーへの聞き取りから明らかになったのは、次の点である。①馬術競技が男女混合で行われることに関し、納得していないという意見は見られなかったが、男女差が一切ないと断言する意見も少なかった。②この競技は馬の管理、個人としてのバランス、人馬の相性等が勝敗を決めるため、ライダーの身体的な差は、別の要素で十分補えると考えるライダーが多かった。③したがって、男性も女性もそれぞれ自分達もしくは自分が乗る馬の強み・弱みを十分に理解し、トレーニングを工夫しながら勝負に挑むべき、と考えている。男性が有利な点もあれば、女性が有利な点もあるが、馬と共に自分の長所を本番で発揮できるかがこの競技の肝となる、という理解が支配的だった。④人間の身体的なハンデを馬が補い、馬が苦手とする運動を人間がサポートする事が重要で、人間の性別の特性のみでこの競技を捉えることは出来ない、という意見が多かった。

馬術の場合、男女の性差という観点のみでなく、人間と馬との関係がより重視され、トレーニング段階からの人馬相互のコミュニケーションの蓄積が競技結果に反映するという理解であり、それが、男女混合が継続される理由となっているようである。なお、馬術のこの特性は、日本において十分に理解されているとは言えず、競技についての偏見も多く存在している。

私は、入学時から、馬術部員として、毎日、馬の世話や管理、運動、そして自分達の練習、試合、部の運営、競技会の運営の補助、さらに競馬場でのアルバイトなどを経験してきた。4年間を通して、生き物(いのち)の大切さを知り、また、組織に対する責任感、向上心、体力を養うことができて良かったと思う。また、国際ボランディアサークルにも所属し、フィジーに行って農村で家を建てる活動に参加したことも貴重な体験だった。男女共同参画社会は男女それぞれの特性、一人ひとりの個性を理解したうえでの協力、さらに生き物を含めた環境の大切さを知ることが重要であり、それが社会の「持続可能な発展」のための生涯学習であることを実感している。

生涯教育の後輩のみなさん、学生時代に、時間を有効に使って、いろいろな体験をして、社会と自分について考えてみてください。

著者プロフィール

管理人 (kaerukun)